デザイナー鈴木一誌さんとの対話
雑誌『アイデア』378号掲載されたデザイナー鈴木一誌さんとの対談記事「ポストインターネット時代の法とデザイン 知恵蔵裁判からクリエイティブ・コモンズまで」がウェブ公開されました。
今週末発売の『アイデア』379号の鈴木一誌特集の予告編としての公開です。
鈴木一誌さんはデザイナーですが、著作権法を勉強した方であれば馴染みの深い「知恵蔵事件」の原告です。
この対談は知恵蔵裁判を今の視点から振り返る、という企画だったのですが、そこには収まりきらない鈴木一誌というデザイナーの衰えを知らない思考と懐の深さが垣間見れる内容になっていると思います。
対談にあたって、絶版になってしまっている太田出版刊行による『知恵蔵裁判全記録』という本を読んでいきました。
この本はとんでもない本で、知恵蔵裁判の地裁と高裁の全裁判記録と原告側の打ち合わせメモ等の書面のやり取りを、戸田ツトム(9/8追記:鈴木一誌さんご自身)による装丁・デザインで全網羅して収めてしまうという本です。
原告側と内藤弁護士の詩情溢れる書面の応酬が堪能できます。
記事について、若干補足させてください。
知恵蔵裁判で鈴木さんはぶっきらぼうな言い方をすれば「デザインとは編集行為である」という主張をしました。
そこでポイントになる「編集著作物」という概念について、記事中、私が「著作権法が編集著作物に著作権を認めることはアイデア保護に踏み込んでしまっているので反対だ」という旨の発言が出てきます。
これは、若干ミスリーディングな発言になっていて、私も、著作権法が「編集方針』というアイデア自体を保護しているのではなく、「編集方針に基づく素材の選択または配列による具体的な表現」を保護していることは理解しています(いわゆる百選事件など)。
それでも、その「素材や配列に拠よる具体的な表現」がシンプルになればなるほど、「編集方針」なのか、その編集方針に基づく「素材の選択または配列による「具体的な表現」なのかの境界は曖昧になってきます。
特に編集著作物の対象範囲は、他の著作物と比較して広範囲に及びやすいので、シンプルな具体的表現を積み重ねが、編集方針と重なってきやすいわけです。
編集著作物の難しさとおもしろさがここにあります。
さて、話しを戻して、鈴木一誌さん。
最近エッセイ本も出されました。
次号『アイデア』と一緒にお楽しみください。
自分はその深さまで思考できているか。
何歳になっても思考し続ける鈴木さんの姿勢に感銘を受けた対談になりました。
鈴木さん、ありがとうございました。