法のデザイン
初の単著を上梓することになりました。
タイトルは「法のデザイン」。
法的な視点から、創造性やイノベーションを阻害せず、 むしろ加速させるためにできることがあるのか、 できるとしてそれはどのようなことか、 どのような点に注意しなければならないのか、 ということについて考えています。
その結果、行き着いたのが「リーガルデザイン」という概念です。
リーガルデザインとは、「法の機能を単に規制として捉えるのではなく、物事を促進・ドライブしていくための「潤滑油」のように捉え、国家が一方的に定めるルールに従うのではなく、私たち私人(しじん)の側から自発的にルールメイキングしていくという考え方であり、手法のこと」(本書より)を指す造語です。
遡れば、それこそ学生時代から、 いまはLINEにいる永井幸輔と、 こういった法によるデザインの可能性について議論していました。
その後、しばらく忘れていましたが、 2011年に私が共同代表を務めるArts and Lawが東京都と共催した「Photo and Law」、「Design, Architecture and Law」という連続講座のなかで、お呼びしたホンマタカシさん、 吉村靖孝さん、田中浩也との対話のなかで、 法的なデザインの可能性が、 再び私のなかでクローズアップされていきました。
このあたりのことは、あとがきにも書いているので、 ご覧いただければ幸いです。
あとがきに書けなかったこともあります。
本書の執筆の動機となったものの一つに、鈴木健さんによる『 なめらかな社会とその敵』があります。
健さんの『なめ敵』は、その内容や各論点に対する賛否は置いておいて、 大いにインスパイアされるものでした。
一方で、『なめ敵』 にこれだけ刺激的なことが書かれているにもかかわらず法分野からこ れに対するレスポンスが聞こえてこないことに歯がゆさがありまし た(もちろん無学な私が知らないだけ、 という可能性もありますが)。
さらに、本書を書き進めているうちに、 法分野からレスポンスが欠けているのは『なめ敵』 に対してだけでなく、インターネット・ カルチャーまたはビジネス全般に対して言えることだ、 という思いが強くなってきました。
もちろん、インターネットに関連する法律や契約に関する解説書は、インターネット・ ビジネスの発展とともにたくさん登場しています。
しかし、 アフターインターネット時代の法分野に関するビジョンは、 ここ日本では欠如したままです。
あらゆる境界を融解する情報化社会と境界を前提とした(現状の) 法との矛盾、 衝突が臨界点に達しつつあることを感じざる得ない昨今の状況にお いて、無謀さに怯んでばかりではいけないと思い、 筆を進めました。
ここまで書いてきたことからもおわかりのように、『 法のデザイン』は小難しい内容もありますし、 決して万民に読まれるような本ではありません。
出版社からは怒られてしまうかもしれませんが、読者を選ぶ本ではないかと思います。
スタートアップの起業家、 官公庁や大企業においてもがいている役人やビジネスマン、 新しい表現を生み出そうとしているアーティストやクリエイター、 既存の法分野のイメージに違和感を感じている法分野に興味のある 学生など、表現活動でも、ビジネスでも、 これまでにない新しい価値を社会に提示したいという思いを抱えた 人。
この本は、 そういう思いを抱えた未来のイノベーターに読んでもらいたくて書 いた本です。
本書がそういった読まれるべき人にしっかり届くことを筆者として は願って止みません。
さて、発売日の2/24まで、あと1週間。
本書がみなさんにどのように読まれるのか、社会にどのように受容されるのか、楽しみです。