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水野祐(@TasukuMizuno)のブログ

弁護士ですが、「リーガル・アーキテクト」という意味での法律家というつもりで生きています。Twitter: @TasukuMizuno / Lawyer / Arts and Law / Creative Commons Japan / FabCommons (FabLab Japan) / All tweets=my own views≠represent opinion of my affiliations

フットボール・リークス(Football Leaks)とスポーツ契約

契約 スポーツ

ウィキリークス」ならぬ、「フットボール・リークス」(以下「FL」)というウェブサイトがサッカー業界を揺るがしている。

FLは、サッカー業界の秘密情報を暴露するウェブサイトであり、特にC・ロナウドギャレス・ベイルメスト・エジルなどの著名選手の契約書(移籍契約書やマネジメント契約書など)がそのまま流出している点で業界にインパクトを与えている(日本人では田中順也柏レイソルからスポルディングリスボンへの移籍契約書とその際のコンサルティング契約書が流出している)。

 

footballleaks2015.wordpress.com

 

ぼくが好きな本の一つに、FCバルセロナのマーケティング部門ディレクターだったエステべ・カルサーダ氏が書いた『SHOW ME THE MONEY! ビジネスを勝利に導くFCバルセロナのマーケティング実践講座』という本がある。

 

www.amazon.co.jp

 

同書はマーケティングの良著であると同時に、バルセロナの契約実務についても詳しく触れられており、サッカー好きの法律家にとっても必見の内容になっている(一応中学・高校サッカー部でした笑)。

 

そんな同書のなかでも契約書については、

契約に含まれている情報が機密性が高いことを、忘れてはならない。よって、契約書にアクセスできる人間を最小限に抑える

 と重要なTipsとして明記されている。

もちろんこれはサッカー業界に限るものではないが、サッカー業界は常にメディアや大衆の好奇に晒されている以上、クラブ運営やサッカー業界において特に秘匿性の高いものといえる。

 

そんな本来流出するはずのない契約書が流出していることもあり、サッカー業界は震撼しているのだが、フットボール・リークスは法律家の勉強の素材としては「宝の山」だ(メディアにとってもそうだろうが)。

同サイトで暴露されている契約書をいくつか読んでみると、超がつくほど有名選手の契約書であっても、多くは比較的平易な英語で、そこまで長文の契約書にはなっておらず、その点にまず驚かされる(これなら自分でも十分対応できそうだぞ、と少し夢を大きくする)。

メディアは同サイトで暴露される巨大な移籍金に目を奪われているが、法律家としては、細かい条項の工夫に目がいく。

例えば、

などがおもしろい。

また、

  • 2014年7月にレアル・マドリーからユベントスに移籍したアルバロ・モラタについて、レアルが買戻権を有しているとともに、レアルが買い戻しを決断した場合、モラタ選手のユベントスでの出場数に応じて移籍金が変動すること(公式戦の50%以上に出場した場合には3000万ユーロ、25-50%未満に出場の場合には2500万ユーロ、25%未満であれば2000万ユーロなど)、そして、ユーベがモラタをレアル以外のクラブに売却した場合にはレアルに8000万ユーロの違約金を支払うことが規定された条項

という例にもあるように、買戻権が付いている場合には、買戻しの際の移籍金が出場回数に連動する条項と、第三者のクラブに売却した場合の違約金がセットになる等の移籍契約(Transfer Agreement)においての定番の条項などがわかっておもしろい。

レアル関連の契約書のリークが多い一方で、バルセロナ関連の契約書が少ない(ネイマールの広告契約書くらい)のはエステべ先生の教えがあってのことなのだろうか(笑)。

 

FLの目的は何なのか。

活動の拠点はポルトガルだが、ドメインはロシアのようである。次の記事では、移籍金が不当に高騰する「FIFAが定める移籍システムの改革」が目的とされているが、どうだろうか。

www.footballchannel.jp

 

サッカー以外のスポーツ契約では、最近こんな記事もあった。

 

jp.vice.com

 

この記事から察するにMLBの契約書は、FLでリークされているヨーロッパのサッカー関連の契約書よりも詳細な長文な契約書になっていそうである。

この理由としては、映画『マネーボール』よろしく、統計・数字による分析が野球業界に浸透していることと、ヨーロッパはいずれも英語を母国語としていないからではないかと思われる(そもそもヨーロッパのサッカー関連の契約書が英語で締結されるという事実も新鮮ではある)。

 

いずれにしても、こういうスポーツ契約のビッグディールを人生で一度くらいは担当してみたいものである。